【1 古典的条件づけ】
古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)
一般的に「条件反射」と呼ばれる現象
蛇や蛙を見るだけでゾッとする、目に異物が入りそうになると無意識に目を閉じるなど、本来は刺激に対する反射であり、生物学的重要性をもった刺激によって引き起こされるもの
条件反応の形成(L.P.パブロフ)
生物学的反応とは無関係な中性的刺激だったはずのものが他の刺激や食べ物と一緒に経験(対提示)することによって似たような反応が引き起こされる
パブロフの犬
犬が生まれつきもっている反射(食物を与えると唾液が分泌される)に、音などの無関係な刺激を対提示することを繰り返していると、音だけでも唾液が分泌されるようになる
・生まれつきの唾液分泌→無条件反応
・音などの無関係な刺激→条件刺激
・音による唾液分泌→条件反応
・条件反応を生み出す手続き→条件づけ
条件づけのタイミング
条件刺激と無条件刺激を時間的に接近させて提示することが重要
条件反応の消去
条件刺激と無条件刺激の対提示をやめ、どちらかの刺激だけを単独で提示することをしばらく続けると条件反応は消える
消去できたはずの条件反応は、久しぶりに条件刺激を提示してみると再出現することがある(自発的回復)
般化と弁別
般化:犬に追いかけられた経験→追いかけた犬を怖いと思う→全ての犬を怖いと思う
弁別:経験を積む中で、様々な犬の区別ができるようになり、類似した刺激に反応しなくなる
【2 オペラント条件づけ】
オペラント条件づけ(B.F.スキナー)
行動主体がある行動を行ったときに、それに付随した結果によって、その行動が再度出現する可能性が高まる(または低まる)という考え
オペラント条件づけの原理「効果の法則」(E.L.ソーンダイク)
猫を「問題箱」と呼ばれる箱に入れ、猫がどうやって脱出するかを観察
一度脱出する方法(紐を引っ張ると戸が開く)を経験し、何度か繰り返すと、箱に入れられたらすぐに紐を引っ張るようになる。
強化
自発された行動に付随してそれを強める条件
強化刺激(正の強化刺激):食べ物やお金、称賛、ほほえみなど
正の強化:ある行動をした後に提示されることでその反応の出現頻度を高めるもの
負の強化:嫌悪的な刺激を取り除くことで行動の出現率を高めるもの
罰
ある行動をした後に嫌悪刺激が付随すると、その行動の出現確率は低くなると考えられる
嫌悪刺激(負の強化刺激):痛み、恥、叱られるなど
【3 一次性強化刺激と二次性強化刺激】
一次性強化刺激
生物学的欲求に合致しているもの(犬のおやつなど)
二次性強化刺激
お金、称賛、メダル、ステータスシンボルなど
お金を持つことで食べ物やその他多くの欲しいものが手に入るという経験を繰り返したことで一次性強化刺激と同様の力を獲得した
人間の場合、二次性強化刺激のほうが人の行動により影響を与えるものとなる
行動形成(シェイピング)
ある目的に対し、いきなり目的の行動をさせるのではなく、それに多少とも近い行動を強化するということから徐々に、目的の行動へと移行させていく方法
Aの行動を教えたいときBの行動をした場合は「弁別」して、Aの行動だけを多く出現させるように強化する。
行動連鎖(チェイニング)
ある報酬を得るために複数の行動を連続して行うこと
シェイピングで少しずつ行動を形成していき、強化されるまでの行動の数を増やしていく
【4 回避・逃避条件づけと学習性無力感】
逃避条件づけ
嫌な環境(騒音・電気ショックなど)に置かれた動物や人が、その環境から逃げ出す方法を見つけ出す学習をすること
例)暑い日に外で飼われている犬が家の中に避難する
回避条件づけ
何らかの兆候(信号)があって、その後嫌悪刺激が与えられるという条件に置かれた動物は、何度か嫌悪刺激にさらされると、信号がくるとすぐに回避しようとする
例)うちの猫が階段を昇る音を聞く→嫌いなお客さんが来ると思う→逃げる
学習性無力感
どうやっても逃げることのできない状況に置かれる経験をすると、回避できるチャンスがあってもそれを学習しようとしないこと
M.セリグマンの実験
犬を3つの群に分け、ハンモックのような装置に入れ、身動きできない状態にして電気ショックを数回与える。
①逃避群:電気ショックは与えられるが顔のそばに設置されたパネルを鼻で押すことで止めることができる(学習すれば逃避できる)
②逃避不可能群:犬には電気ショックを止める手段がない
③統制群:身動きはとれないものの、電気ショックは与えられない
その後、2つに分かれた部屋の一方に犬が入れられ、ランプが点灯すると電気ショックが来るので、隣の部屋に逃げ込むという回避条件付けの学習を行う。
①逃避群と③統制群は、隣の部屋に逃げ込むことを学習できたが、②逃避不可能群は、電気ショックが与えられても逃げようとせず、回避条件づけが最後まで成立しなかった。
人間の場合、一律に学習性無力感に陥る訳ではないが、自分の置かれた状況をどのように解釈するかによって、その後の行動には大きな相違が生じる可能性がある。
【5 社会的学習】
社会的学習(あるいは観察学習)(A.バンデューラ)
・他者(モデル)がある行動をした結果、強化されたり罰を受けたりするのを見て、自分が同じ行動をするときの参考にするということが人間だけでなく動物にもあると指摘
・ある行動をそっくりそのまま真似るというだけでなく、より一般化された行動のルールを、見ていることで学ぶ
・お兄ちゃんが叱られているのを見て、弟が行動ルールを観察学習する
・モデルの行動が成功すれば自分も同じ行動をするし、不成功に終われば行動しない
・新しい技術や、アイディア、ファッション、習慣などは「人まね」で学習し、流行させる
・人間以外の動物も観察学習を行っている
人まねについて
脳の前頭葉にあるミラーニューロンが関係している
ものを摑む・握る・破るなどの行動をすると発火→他人の行動を見ても発火する
・新生児が大人の動作を真似る
・乳児は新しい遊びを真似、1歳を過ぎるとテレビのモデルの行動を真似る
・子どもが自発的に本を読まなくても、本を読んでいる子がたくさんいる場所に連れて行くと自然に本を読むようになる
・良い行為だけでなく、社会的に好ましくない行為も真似の対象となる